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Netflixオリジナル、SNSの闇に落ちた狂気のポーランド映画『ヘイター』

前回までは旅の記録でしたが、本日は大好きな映画についてです。

 

各国の映画祭で大きな評判を受けた『聖なる犯罪者』(2019)が現在日本でも劇場公開されており、期待の新人として知られるようになったポーランドの映画監督ヤン・コマサの最新作『ヘイター』(2020)です。

こちらの作品はNetflixオリジナルで観ることが出来るので観てみました。

 

ストーリー

裕福な家族から援助を受けて大学に通っていた主人公のトマシュは、あることがキッカケで大学を除籍され、どうしてもバレるわけにはいかなかったのでお金を得るために仕事として選んだのは、嘘の情報をSNSに拡散しクライアントを優位な状態にする中傷戦略を行う会社だったことから闇の世界へ足を踏み入れます。

トマシュの行動はエスカレートしていき、狂気に満ちていき大きな事件を起こしてしまいます。

 

 

フィクションとされているこの作品ですが、2019年1月13日にポーランドで起こったパベウ・アダモビッチ暗殺事件と多くの類似点が指摘されています。

同監督の『聖なる犯罪者』も、ポーランドで実際に起こった出来事から着想を得ており、事実からの着想だということも十分に考えられます。

 

そういった闇がある映画、大好きです

 

 

映画の始まりの場面でトマシュは大学から除籍を言い渡されるのですが、このときのトマシュは家族の愛情を十分に受けることなく裕福な家族に強い憧れと憎しみを静かに持つ、どちらかというと弱者のような印象を受けます。

 

援助を受ける家族の娘に長年抱いていた好意を、家族そろって邪険に扱われたことがきっかけで人間の理性が外れたような気がしました。

 

そんな時にSNSの中傷戦略の会社で働き始めてしまったことでトマシュの中の何かが狂い始め、闇の歯車が合い加速していき、自分の中の自信となっていったのではないでしょうか。

誰も信じることなく、騙し合いながら。

 

一方で、好意をよせる少女の前ではどれだけ裏切られても離れていくことが出来なかったところに人間味を感じ、この映画の中の”救い”になっています。

 

 

ただ、他の方の感想にもあるように少し詰め込みすぎな印象でした。

一般的な学生だったトマシュがFacebookを変幻自在に操り、長年プロとして仕事してきた同僚を打ち負かし事件の黒幕になるスピードがあまりにもトントンと行き過ぎて違和感を感じます。

裏切られた少女やその家族の懐へ入っていく秀逸さも、あまりにもスムーズな印象です。

 

監督は主人公の少年をダークサイドだけでなく、望みや希望を叶えてあげたかったのかもしれません。本当に、実際の事件を題材にしていたとするならば、事件の主犯の男に監督の思いを重ねていたのかもしれません。

 

実際に監督はオンライン上で暗い日常を送っていた過去があったとインタビューで答えています。

 

 

SNSを題材にした映画はここ数年毎年のように話題に上がってきますが、ポーランドの暗い雰囲気とSNSが掛け合わさり怪しい雰囲気を見事に描いていたなといった印象でした。